大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)1835号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人栗谷四郎の上告趣意第一点について。

物価統制令三条違反の犯罪成立後同令四条に基く価格指定の告示が廃止されても既に成立した犯罪の刑罰を廃止するものでないことは当裁判所屡次の判例である。また、飲食営業緊急措置令は、当初からその二条において一定の期間だけその効力を有するいわゆる限時法的性格を持つ趣旨を表明し、その後三回に亘りその期間を延長した末昭和二四年五月七日飲食営業臨時規整法附則四項で「飲食営業緊急措置令は、廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、同令はなおその効力を有する。」と規定したものである。されば、所論免訴の主張は、いずれも刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らないし、また、同四一一条五号を適用すべきものとも認められない。

同第二点、第三点について。

所論第二点は、原判決が「当時被告人会社の業務に関し、法定の除外事由がないに拘らず」と判示した認定を非難するに帰する。また、原判決が右のごとく認定判示した以上営利の目的がなくとも物価統制令第三条違反の成立を阻却しないものであること同令一一条但書の規定によって明白であるから、特に営利目的の有無の主張について判断を与えなくとも所論第三点のような判断遺脱の違法があるともいえない。されば、所論は、刑訴四〇五条の上告理由にも当らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも思われない。

同第四点について。

所論は、単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、原判決挙示の証拠で原判示の事実認定を肯認することができるから、所論の違法も認められない。)

同第五点について。

所論は、単なる訴訟法違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、被告人長谷川六朗に対する本件物価統制令違反の犯罪は、第一審の相被告人軽部与兵衛、相被告人山本惣太郎同石川孝作の本件物価統制令違反の犯罪の一部と時期及び場所を同じくして各別に犯されたものとして旧刑訴八条一項四号に従い起訴されたものと認められるから、所論の違法も認められない。)

同第六点について。

所論は、単なる訴訟法違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして訴訟費用の負担のごときは、旧刑訴四〇三条にいわゆる「刑」に関するものではないから、原判決より不利益に変更しても同条の違反があるとはいえない(しかのみならず被告人会社は原審では第一審判決の罰金七〇万円を罰金三〇万円に減額されている)。それ故、同四一一条を適用すべき余地が全くない。

よって、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決する。

この判決は論旨第一点の物価統制令違反については真野裁判官の免訴すべしとの意見を除き(判例集四巻一〇号一九八三頁以下参照)裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例